-プロが認めた建築・インテリア-
変化するもののある暮らし
わたしが推薦します/建築家 内田雄介設計室 内田 雄介
住宅において照明はとても重要な要素のひとつです。照明ひとつで、空間の雰囲気をガラリと変える事が出来るのも照明の魅力とも言えます。
FUTAGAMIの照明は凛とした佇まいがとても魅力的です。シンプルなデザインがより真鍮の素材感を引き立て、小さいながらも空間に大きな存在感を与えます。
電気を付けていない時にも、ずっと見ていたくなるそんな照明です。また年月の経過と共に、味わい深くなっていく過程を楽しめるのも飽きない理由のひとつかもしれません。
数ある照明の中でも、シンプルでありながら独自の存在感があるFUTAGAMIの照明を私はお勧めします。
目次
1 「真鍮」という素材のこと、知っていますか?
2 無垢の真鍮であるが故の強さ
3 モノづくりの現場と切り離さないことの意味
4 「劣化」ではなく「熟成」させてほしい。 変わりゆく表情に込められた想い
5 真鍮技術×デザインの化学反応 FUTAGAMI 処女作で初受賞!
6 会社情報
7 Special Thanks by プラナビ
「真鍮」という素材のこと、知っていますか?
豊かな自然に恵まれ、 薫り高い文化と伝統が息づく、 富山県西部の中心都市・高岡市。詩経の一節「鳳凰鳴けり彼の高き岡に」から「高岡」と名付けられたこの町には、今もなお「ものづくりの技」が脈々と息づいています。
高岡市の街並み@高岡大仏 鋳型から抜いたばかりのランプシェードの傘
明治30年創業の株式会社二上は、高い鋳物の技術で「真鍮-しんちゅう-」を扱う鋳物メーカーです。元々は仏具を製造していましたが、仏間のなくなる時代背景に伴い、仏具のシェアは下降するばかり。元々の鋳造技術を活かして他に何かできないかと、2009年に真鍮の生活用品ブランド 『FUTAGAMI(フタガミ)』 が生まれました。
キーとなるのは「真鍮」という素材。アンティークのような控えめな輝きで、家具や建材にも多く使用されることが多い金属ですが、その実態は「銅と亜鉛の合金」
。一番身近な真鍮はそう、5円玉です。ピカピカの金色から黒くくすんだものまで風合いは様々ですよね。腐食しにくく、加工しやすい一方、人の手や空気に触れて表面はだんだんと変化する特徴があり、風合いの変化を長く楽しむことができる素材です。
タオルハンガー、ドアノブ、照明にカトラリー。上品な佇まいで溶け込み、だんだんと味わい豊かに印象を変えていく・・・なんだか家の景色が少し違って見える、FUTAGAMIのアイテムにはそんな力があります。
無垢の真鍮であるが故の強さ
真鍮素材の最大の魅力は、その素材そのものが持つ独自な風合いです。金属でありながらも柔らかく、光沢も優雅で、上品な存在感を放ちます。
真鍮は使えば使うほど表面が酸化し、独特の味わいが出て、持ち主の手と場所に馴染んでいく素材なのです。
その移り行く変化を最大限に楽しむため、FUTAGAMIではメッキや塗装などをしない『無垢の真鍮』であることを大事にしています。手に触れるとざらっとした触り心地は、真鍮鋳肌ならでは。独特の砂目、色合い、擦れ具合・・・同じ型のアイテムでも一つ一つ違う表情が『無垢の真鍮』の証。
画像左:「光芒(こうぼう)」2018年9月の新作
※カメラ用語で雲の隙間などから太陽の光が筋になって見える現象の意味。
画像中央:「星影」ランプシェード上部の透かしから、天井に星型の影を投影する照明
画像右:スイッチカバー
モノづくりの現場と切り離さないことの意味
FUTAGAMIの作品がずらりと一同に集まる素敵な2Fショールームの窓からは、1Fで作業しているモノづくりの現場を見ることができます。キレイで美しいインテリアや雑貨は、美しいシーンだけを切り取って見せたいと思うのが人の心理。
ですが、二上のショールームではあえて作業場が見えるようにこだわりました。
FUTAGAMI@富山本社のショールーム
FUTAGAMIを形作る上で、心臓ともいうべき場所。高岡という土地の水・土・砂・空気。砂をならし、型をつくり、火をいれ、砂に埋め・・・冷やし固めた真鍮の表面を確かめるように削る音。機械を使う事はあっ
ても、機械任せにはせず全ての行程を人の手で行います。ひとつひとつを手作業で積み重ねていく現場の匂いや音は、さながらお母さんのお腹のなかにいる赤ちゃんを育てている時間のよう。ショールームに鎮座する作品が、生まれてくる前に立ち会える場所です。モノづくりを見せられるのは、手仕事に嘘のない証。すべてを見せられる素直さに、FUTAGAMIへの信頼度が高まります。
真鍮の金色の向こうに、真っ赤に溶けた金属や砂を踏みしめる音が聴こえてきませんか。
「劣化」ではなく「熟成」させてほしい。 変わりゆく表情に込められた想い
「とにかく沢山使ってほしい」とは、現社長(4代目)二上利博さん。
お客様の手元に届いた時をスタートにしたい、その想いにこだわりました。
「FUTAGAMIはあくまで生活用品、つまり道具なんです。FUTAGA
MIのアイテムに決まった使い方なんてありません。形や使い方を自由に楽しんで欲しいです。私たち作り手は、経年変化の中にも2種類あると考え「熟成」と「劣化」を明確に分けてとらえています。何もせず置いておくだけでも、真鍮の表情は変わっていきます。が、飾っておくだけで埃をかぶって人の手に触れないものは、どことなく寂れてしまう・・・それは劣化なのです。毎日人が手に持ち、時には落としたりぶつけたり・・・触れて使ったものは、だんだんと表面がツルツルしてなんとも言えない風合いに「熟成」していきます。ぜひ、どんどん使って『熟成』させることを楽しんで欲しい。」
FUTAGAMIの良さは新品にあらず。使い続けていく最後の最後が最もベストな風合いを楽しめるのです。
真鍮技術×デザインの化学反応 FUTAGAMI 処女作で初受賞!
2009年に、真鍮素材の魅力を引き出す「二上」の高い技術とOji & Design/大治将典氏のデザインが出会い、鋳造の生活用品ブランド「FUTAGAMI」が誕生しました。「様々なことが、穏やかに、気持ちよく繋がっていくデザインを日々考え、ものづくりに携わっている」という大治将典氏のコンセプトと融合したFUTAGAMIは、同年6月に3つの作品として世に姿を現しまし
た。
「鍋敷き・栓抜き・フック」それぞれに月や太陽、星の名を冠したその作品は、シンプルかつ雰囲気のあるデザインに加え、素直な使いやすさが評価され、東京ビッグサイトで毎年開催される「Interior Lifestyle2009」にて、なんと初作品・初参加にもかかわらず栄えある賞を受賞。
Interior Lifestyle Awardsの5つあるアワードの1つ「オールアバウトスタイルストアアワード」に輝きました。以降も毎年必ず新作を生み出し続け、FUTAGAMIに魅了されるファンを増やし続けています。
画像上 :銀河・太陽・月
鍋敷き
画像下(左):星
鍋敷き
画像下(中):三日月・日食・粋
栓抜き
画像下(右): フック
一見栓抜きにはみえないほどオシャレ
会社情報
株式会社二上(フタガミ)
取材後記
「真鍮」という、金属でありながらも金属特有の冷たさを一切感じさせない温かみがある。それがFUTAGAMIのアイテムを見て感じた第一印象です。
職人さんの手からカタチが生まれ、長く使ってほしい・使えるように・・・という想いが、1000℃に溶けた真っ赤な金属とともに鋳型に流れ込んでいくような気持ちを覚えました。作り手の人の心が通ったFUTAGAMIのアイテムは、暮らしをドレスアップするオシャレさだけでなく、1つのものを大事に使いたいと使い手に思わせてくれる。そんなブランドでした。
(取材:プラナビ編集部 森本)
Special Thanks by プラナビ
照明 FUTAGAMI をご推薦くださいました
建築家 内田雄介建築設計室 内田雄介
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