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執筆者の写真プラナビ編集部

アルジャーノが生んだ照明の傑作 FLOS/ARCO(アルコ)

更新日:2020年4月2日

-プロが認めた建築・インテリア-

世界中で愛される、普遍的デザインの魅力



 

わたしが推薦します/建築家 ワイズデザイン一級建築士事務所 池田 佳人


我々建築家にとって「昼と夜・天候によって変化する光をどのように建築に活かすか」という照明計画は極めて重要であり神経を使うポイントでもあります。


吹き抜けなどで開放感のあるスペースにすることも多いダイニングやリビングの照明計画は特に難しく、手元を照らす照明を施主に委ねる人もいますが、私はARCOをよく指定しています。

単独で見ると存在感があるにも関わらず、実際に使ってみると周囲の建築やインテリアにしっくりと溶け込んで、むしろ周りを引き立ててくれる控えめさもある・・・そんなARCOに惚れ込んでいます。明かりを点けても点けなくてもインテリアに馴染むし、ダイニングテーブルの位置を変えても使えることもあって、多くの施主から「これにして良かった」と評価して頂けるアイテムです。

 

目次


1 職人の気概を持ったデザイナー、カスティリオーニ兄弟

2 ARCOに込められた職人魂

3 機能美が持つ普遍性

4 会社情報

5 Special Thanks by プラナビ

 

職人の気概を持ったデザイナー、カスティリオーニ兄弟





20世紀のイタリアを代表する

建築家・デザイナーであると同時に

とりわけ照明の分野において世界的名声を博してきた二人の人物。


それがピエール・ジャコモとアキッレのカスティリオーニ兄弟です。





ピエール・ジャコモとアキッレのカスティリオーニ兄弟



二人は長兄のリビオと共にイタリアのミラノ工科大学建築学科を卒業した後に建築家・デザイナーとしてのキャリアを歩み始めますが、リビオが独立した後は二人での活動となり、1962年にFLOS社が設立されるとデザイン責任者として招聘されて照明の分野での活躍が目立つようになりました。


彼らのデザインは、日常生活からヒントを得たアイデアを基に、できる限り身近にある普通の素材を使用し、(機能・デザインいずれにおいても)必要最小限の素材で最大の効果を発揮できるように工夫されているのが大きな特徴です。


数々の素晴らしい業績にも関わらず「作ったデザイナーの名前など知らなくても、昔から存在していたかのように普通の家庭でごく自然に使ってもらえると嬉しい(アキッレ)」と謙虚に語る態度は、生涯に渡ってひたすら優れたモノ作りに邁進した姿勢と相まって、デザイナーというよりも尊敬すべき「アルティジャーノ(職人)」と呼ぶ方がふさわしいのかも知れません。


兄弟は、ジャスパー=モリソンやマイケル=アナスタシアデス、コンスタンティン=グルチッチといった著名デザイナー達からも慕われ尊敬されていたことが知られていますが、それもこうしたスタイルゆえだったのでしょう。





ARCOに込められた職人魂


そんなカスティリオーニ兄弟の最高傑作の一つが、1962年に発表された照明=ARCO(アルコ)です。


「天井に穴を開けなくてもダイニングテーブルを美しく照らす照明を作れないか」と考えていた二人が、街燈を見て思いついたのがARCO独特のアーチを描いたようなスタイル。


ARCOはイタリア語で「アーチ」の意味 大理石部分の丸い穴



ベースには、イタリアのカッラーラ地方で豊富に採取される大理石を使用して全ての機能を支えて安定させており、ベースの大理石はオブジェとしての役割も果たしています。


この大理石部分には丸い穴が開いていますが、ここにはアーチ部分


を支えるネジが隠されていると同時に、必要とあれば棒を差し込んで二人で簡単に移動させられるように工夫されているのはちょっとした驚きです。


ベースの大理石から先端の照明部分までは直線にして2m20cmもあるのですが、実はこれにも大きな意味があります。

ヨーロッパ・特にイタリアで食事と言えば皆で大いに楽しむもの。

時には食事の最中に移動しながら互いに杯を交わし、家族や友人との絆を確かめ合うものでもあり、ARCOを使用していても、テーブルで食事をしている人の後ろを誰かが自由に通ることができる動線が確保されているのです。




機能美が持つ普遍性


ARCOには、シンプルな形状の中にまだまだ多くの機能性が盛り込まれており、それがまた同時に優れた機能美を演出しています。


アーチ部分は3つに折り畳んでコンパクトにできますし、シェード部分の高さを調節することができるようにもなっています。

照明部分の天井には放熱のための穴が開いているのですが、それがまた魅力的なデザインともなっているのです。


傑作照明=ARCOは発表当時から優れた機能美が話題を呼び、50年以上が経過した今もなおほとんどデザインを変えることなく、評価の高い照明として世界中で愛され続け


ています。


世界的デザイナーでありアルティジャーノでもあったカスティリオーニ兄弟の「匠の技」から生まれた真の機能美だからこそ、時代を超えて魅力が色褪せないのではないでしょうか。




会社情報

FLOS JAPAN/日本フロス株式会社





Special Thanks by プラナビ



照明 ARCO をご推薦くださいました


建築家 ワイズデザイン一級建築士事務所 池田佳人 





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